香りと嗅覚と記憶
最近は香りに関しての講演やセミナーが増えてきているので、
今日は最近のセミナーでお話しした内容を簡単にご紹介しますね。
テーマは「香りと嗅覚、そして、記憶」に関して・・・
「道ですれ違った人の香水の香りでかつての恋を思い出す。。。
一緒に手をつないで微笑みあった美しき日々・・」
そして、思わず胸の鼓動が早くなる。
こんな経験、誰しも一度はありますよね?
これはなぜなんでしょうか?・・・
実はあまり知られていないのですが、嗅覚と脳の構造が密接に関係しているんです。
脳の中にある、大脳辺縁系という部位の中にある、”海馬”という箇所、実はこの海馬が記憶を司っていると言われているんですね。
(よく教育系のバラエティ番組なんかで、海馬は出てきますよね)
そして何を隠そう、この海馬に直接的に電気信号を送れる唯一の感覚が嗅覚なんです。
嗅覚以外の五感は、海馬には電気信号を送れません。
なので、記憶と結びつくまでに、ある程度の時間がかかったり、またその結びつきも嗅覚ほど強くはないと言われてます。
かつて旅行した土地を再訪した際に、その土地の匂いや香りで以前の記憶が甦ったり…
久しぶりに再会した恋人を、ふとした瞬間に、香りで思い出したり…
人は、知らず知らずのうちに、嗅覚で記憶とコミュニケーションを取っているんですね。
確かに、振り返ると、嗅覚で記憶がフラッシュバックするときの速度は、本当に一瞬ですもんね。
脳科学的に見ても、記憶と香りってかなり深い関係があるんですね
そして、この事を深〜く理解していると、香水の使い方がかなり変わってきます。
言われてみると、香水のプロデューサーとして、様々な方と会ってきましたが、香水を巧みに使う人って確かにこういう嗅覚と記憶の特性を理解しているように感じます。
例えば以前お会いした女性は、、、
「わたしは世の中でなるべく多くの人が使っている香水を使うの。
なぜなら、街で誰かとすれ違うたびに私を思い出して欲しいから。」
と言っていました。
自分に自信がかなり無いと難しい使い方ですが、香りと記憶の関係性に着目したこの考え方には一理あるのではないでしょうか?
一方で一つの恋が終わると香水を変える、という人も多くいるのも、納得ですよね。
こういった嗅覚と記憶の関係性には、大きな可能性が眠っていると僕は考えています。
例えば、アメリカのアルツハイマーの権威は、アルツハイマーや認知症を始めとする記憶障害の兆候は嗅覚の衰退に見ることができる、と考えています。
一昨年開催された国際アルツハイマー病会議では、嗅覚検査で一部のにおいを識別できなかったグループは認知障害を示す確率が高いことを示す研究が発表されたり、と嗅覚と健康には深いつながりがある事は最近になって広く学界で話されてきているんだ。
であれば、嗅覚が衰えなければ、もっと言えば、嗅覚を鍛え続けていれば、脳年齢を若々しく維持することができるのではないでしょうか?
嗅覚と記憶の関係・・・ そしてそこに香りという要素が入ってきた時に、僕はそこに新たなフロンティアの可能性を感じています。