2025.11.27 04:40第六章:匂い立つ名のもとに|1 scent for dreams静かなる復讐は、花が咲くように始まった。音もなく、だが確実に。類は、あの日ネロリの名が奪われた悔しさを胸に、それでも香りの世界で生きることを選んだ。そしてその選択は、やがて誰にも止められない“快進撃”へと変わっていく。
2025.11.13 04:00第五章:均一の檻にて|1 scent for dreams朝の通勤電車は、まるで押し花のようだった。誰もが皺一つなく畳まれ、無言のまま定位置に押し込められている。類はそのなかで、呼吸の仕方を忘れかけていた。学生時代に抱いた「自分は特別だ」という誇りは、吊り革の揺れとともに、次第に色を失っていった。香水会社——それは華やかな世界だと誰もが思っていた。だが、実態は違った。「ヒットを出せ」「売上を伸ばせ」「トレンドを見ろ」感性ではなく、数字が求められた。彼の提案する香りは、何度も却下された。「詩的すぎる」「分かりにくい」「売れない」その言葉のひとつひとつが、かつて演技の現場で浴びた評価とは異なる種類の冷たさだった。そして、彼が学んだことは——会社とは、均一化の装置である、ということだった。
2025.10.23 08:07第四章:曖昧な光、確かな影|1 scent for dreams夢は、ある日突然、光を失う。だがその失明は、外から見れば気づかれぬほど緩慢で、まるで夕暮れが夜に溶けていくようだった。類は、俳優になる夢を捨てた。それが「夢」だったことにすら、後になって気づくほどに静かに、その想いは手のひらから零れていった。演技を愛していた。だが、業界はそれとは別の顔をしていた。表現は情熱ではなく、機会に。才能は輝きではなく、誰かの都合に変換される。光の中に立つには、無数の“知らぬ誰か”に、評価されなければならなかった。「いい役者になるより、いい役をもらえる人になれ」と、ある演出家は言った。類には、それが呪いのように聞こえた。
2025.10.09 03:15第三章:目覚めゆく感性|1 scent for dreams日曜の午後、テレビの画面が淡い光を放つ。父が眠っている隣で、類は黙ってその光を見つめていた。画面の中には、架空の誰かがいて、架空の街を歩き、架空の恋をしていた。けれど、類にとってそれは、現実よりもはるかに確かなものだった。「ぼくも、あそこに行きたい」その言葉を誰に向けたわけでもない。けれど、その瞬間から類の内側で、何かが目を覚ました。それは、演じたいという欲望ではなかった。なりたいわけでも、見られたいわけでもない。ただ、「何かを伝えたい」という、原初の衝動のようなものだった。
2025.09.25 07:00第二章:失われた午後のなかで|1 scent for dreams午後の光は、いつも斜めだった。幼い類の世界では、光は正面から差し込んでくるものではなく、畳をなぞるように傾き、沈黙の縁を縫っていくものだった。その光のなかに、父がいた。分厚い新聞の陰から顔をのぞかせることもなく、ただ静かに、冷えたコーヒーを啜るだけの人だった。父・葉山征爾。彼は熊谷の旧家の出で、敗戦で全てを失った祖の息子として、失われた誇りを、歯を食いしばって拾い集めてきた人だった。「勝たねば意味がない」そう口癖のように呟く父の言葉には、何かを信じるというよりも、何かを赦さぬ決意が滲んでいた。
2025.09.11 06:54第一章:風は、記憶の扉を叩く|1 scent for dreams風が吹いていた。それは午後三時の静寂を優しく破るようにして、葉山家の窓辺をかすかに鳴らした。鳴ったのは、風ではなく記憶かもしれなかった。あるいはそれは、遠く去っていった人の気配だったのかもしれない。
2021.10.26 04:25フレグランスプロデューサー 育成の志セントネーションズ ではフレグランスプロデューサーを志す人材を常に募集しています。私がレイヤードフレグランス(ショーレイヤード )を立ち上げてきたように、自分の思いや感性を香りの世界で描いていく人材を育成したいと思っていますし、優良なブランドを複数保有する会社になっていきたいと考えています。必要な要素は下記の通り。・哲学的な思考や芸術的な系譜を理解できる学識。・異文化や多種多様な考え方に寛容な開かれた心。・強い責任感と絶対に折れない心。興味がある方はセントネーションズ の問いあわせ窓口からどんどん応募してきてください。
2021.04.05 15:442020年決算を振り返ってうちの会社の決算は12月なので、ちょっと前に2020年の決算を締めました。詳細の結果をここでいう必要は無いので、ざっくりだけど2019年対比で105%くらいで伸ばせました。2020年は実質、3ヶ月間くらいは売上が無かったから、その中で伸ばせたのは良かったな。まぁ、でも、必死にやったからな。2020年。で、2021年はめちゃくちゃ重大発表がここからかなり連発すると思う!すんごいのが来るので乞うご期待。ブログも私が管理していると滞ってしまいがちなので、今後はタイミングを見てスタッフ管理の更新に切り替えていこうと思います。そしたら更新頻度落ちないからね笑。うちの会社作ったときは、「日本のフレグランス産業を輸出産業に!」というスローガンで創業したけど、今年の年...